八百津町の歴史房姫様物語④

翌朝になりました。
「よね」はいつものように弟を背負って
お寺に行きました。
今朝は和尚さまはどんなお顔だろう。
心配でなりませんでした。
和尚さまは朝のお勤めの用意で
忙しそうに掃除しておられました。
昨日のまんじゅうはもうありませんでした。

お経が始まるとき、和尚さまが言いました。
「よね、ここへ来て、
私と一緒にお参りしなさい」
「よね」は和尚さまの後に正座し、
弟を背負ったまま小さな手を合わせました。
いつ和尚さまのカミナリがおちるかと
心配で心配で、朝のお勤めも上の空でした。

お経が終わると、
和尚さまは静かに話しかけました。
「よね、昨日のことだが、私の留守に
仏さまのまんじゅうを黙って食べたのは、
よねだな」
「はい」
「よね」は正直に返事しました。

房姫桜 引用:福地いろどりむら通信 18号掲載
構成・挿絵:北野玲/参考文献「宝蔵寺の昔話・房姫様物語」(山田貞一)

宝蔵寺は臨済宗・妙心寺派の寺です。
寺の前進である宝蔵寺が、この地に永くありました。 その昔、この地に来た巡礼の女人「よね」が、宝蔵庵で出家して尼僧となり、房姫様と呼ばれて親しまれました。
四十年ほど仏道に勤め、享和二年(一八〇二)に六二歳で浄土に旅立ったのです。

房姫桜はその尼僧を偲んで名付けられたヤマザクラで、樹齢二百数年です。八百津の天然記念物として文化財に指定されています。 周辺の樹木や進入林道の整備など、「房姫桜保存会」(金井正尋代表)では環境保全活動をおこなっています。
4月中旬が見頃で、ライトアップもします。 山里ならではの幻想的な夜桜を是非一度ご覧ください。


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(宝蔵寺住職・小笠原正)
光明山 宝蔵寺 〒505-0422 岐阜県加茂郡八百津町久田見4297
2019/08/19 投稿
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