今日もよねは弟を背負って寺の境内で遊んで居ました。
ふと沸様の祭壇を見ると大きな饅頭が一重ね、お供えして有る。これを見たらよねは喰いたくて 喰いたくて 喉から生唾を呑んで、何とか上手に貰って食べられないかを勘考する。
今までこんな饅頭など喰ったことが無い。
「こんな饅頭を腹一杯喰ったら旨かろうなぁ」
それ以外は何も思わない。
今日は近くで葬式があるらしい。
和尚様が寺を出るのは昼前の頃だろう。その時を見計らって 沸様の饅頭を貰うことにした。
でも和尚様に許可も無く貰ってもいいだろうか。
和尚様は間もなく葬式に出ていった。
黙って 沸様の物を貰えば盗人となる。
でもこんな饅頭を喰ったことはない。右に左に善悪が交差して心が定まらずして居る時、よねの頭にひらめいたいい勘考が有った。