「お~よね」‥…「昨日、私の留守に佛様の饅頭を黙って喰ったのは、よねか」
「はい」「饅頭を喰いたいのは解るが、佛様の物を黙って喰ってはいかん。喰いたければ私に饅頭を下さいと何故云わなんだ。まして黙ってとった上、指でアンだけ喰って外の側だけ佛様にお供えするとはけしからん」
よねは堪えて居た涙と声が一気に噴き出し堰を切ったように泣き出した。
背中の弟も泣き出した。「和尚様ご免なさい」と一心に断り、「これからは絶対人の物に手を出しませんから許して下さい。」と懸命に断りやっと許しを得た。
和尚様は「解ればいい解ればいい」と云って佛様にお供えして有った”ういろ”を一個呉れた。
和尚様の前で堂々と”ういろ”を口にした。
大きな饅頭のアンと小さな”ういろ”の一切れは本当に旨かった。
『明日から饅頭を黙って喰った罰として三、四日、寺の境内を掃除しよう』よねは思った。