房姫様物語⑥
「よね」は翌朝から人が変わったように熱心に働く子になりました。弟を背負ったままで境内の掃除をするのは、決して楽な仕事ではありません。それでも「よね」は落葉清掃などとても熱心にやるようになり、和尚さまを関心させる子になりました。 その後は和尚さまの毎日のお勤めの準備も手伝うようになりました。お経も毎日聞いているうちに、いつの間にか覚えてしまいました。 その後、数年がたちました。弟を背負わなくてもよいようになると、檀家の法要や葬儀にも和尚さまについていってお手伝いをするようになりました。 引用:福地いろどりむら通信 20号掲載 構成・挿絵:北野玲/参考文献「宝蔵寺の昔話・房……more >>

房姫様物語⑤
「まんじゅうを食いたいのはよくわかるが」和尚さまはやさしい声で言いました。「仏さまのものを、黙って食ってはいかん。食いたければ、私にまんじゅうをくださいとなぜ言わなんだ。まして黙ってとったうえ、指でアンだけ食って、外の皮だけ仏さまにお供えするとはけしからん」 「よね」はがまんしてきた涙と声が一気にふきだし、大声で泣きました。「和尚さま、ごめんなさい。もう人のものには手をだしません」心からあやまりました。 「わかればいい」和尚さまはそう言って、仏さまにお供えしてあったウイロウをくれました。和尚さまの前で堂々と食べるウイロウは本当においしいウイロウでした。「よね」はうれしくて、おい……more >>

房姫様物語④
翌朝になりました。「よね」はいつものように弟を背負ってお寺に行きました。今朝は和尚さまはどんなお顔だろう。心配でなりませんでした。和尚さまは朝のお勤めの用意で忙しそうに掃除しておられました。昨日のまんじゅうはもうありませんでした。 お経が始まるとき、和尚さまが言いました。「よね、ここへ来て、私と一緒にお参りしなさい」「よね」は和尚さまの後に正座し、弟を背負ったまま小さな手を合わせました。いつ和尚さまのカミナリがおちるかと心配で心配で、朝のお勤めも上の空でした。 お経が終わると、和尚さまは静かに話しかけました。「よね、昨日のことだが、私の留守に仏さまのまんじゅうを黙って食べたのは……more >>

房姫様物語③
あまいアンをお腹いっぱい食べたものの、家に帰った「よね」はだんだん不安になってきました。こんなことをして、ほとけさまのバツが当たったらどうしよう。「よね」は心配で心配で、おふとんにもぐりこんでしまいました。 ばんごはんにも「よね」が起きてこないので、お母さんは心配になりました。「よね、どうしたの?」とお母さん。「お腹がいたい」と「よね」はウソをつきました。本当はお腹がいっぱいで、ばんごはんが入らないのでした。 お母さんは心配してオカユをつくり、「よね」のまくらもとに置きました。ところが「よね」がそれも食べないので、今度は煮つめたセンブリを持ってきました。「これを飲みなさい」セン……more >>

房姫様物語②
その日、徳行寺の和尚さまは外で用事があるらしく、昼前にお寺を出ていきました。「よね」はふと思いついた方法をどうしてもやってみたくなり、とうとうほとけさまのまんじゅうに手をのばしてしまいました。 お寺の階段に座り、饅頭に人差し指をつっこんで、中身のアンだけを上手にすくって食べてしまいました。背中の弟にもすくったアンを指で食べさせました。 すっかりアンを食べてしまうと、外側の白いところをそのまま残して、もとどおりの場所に戻しました。日も暮れかけたので、家に帰りました。 引用:福地いろどりむら通信 16号掲載 構成・挿絵:北野玲/参考文献「宝蔵寺の昔話・房姫様物語」(山田貞一……more >>

房姫様物語①
「よね」という名前の娘がいました。寛延元年(1748年)、奈良県柏村の貧しい家に生まれました。男3人、女4人の兄弟を持つ次女でした。 「貧乏人の子だくさん」と言われているとおり、生活は大変で、年上の子供たちは、家の手伝いや子守など、一生懸命に働きました。「よね」も12歳となり、弟たちの子守が毎日の仕事でした。 ある日、「よね」は幼い弟を背負い、近くにある徳行寺の境内で、子守をしていました。ふとほとけさまの祭壇を見ると、それはそれは大きな饅頭が、日と重ねしてお供えしてあります。 「よね」はそのまんじゅうが食べたくて食べたくて、つばを飲みながらあれこれ試案しました。なんとかう……more >>