饅頭でポンポコポンの腹に夕食など喰える筈もない。
偽病も大変で有る。母は心配してお粥を作って来て「喰え」と言って置いて行ったがお粥などは喰う気にはならず布団をかぶって居ると「腹が痛くてお粥も喰えんでは」と言って今度はセンブリの煮詰めたものを呑めと云って寝床へ持ってきた。これは苦くて苦くて呑めるものではない。(センブリとはトウ薬のせんじた漢方薬で有る)昼は甘い饅頭を腹一杯、今夕は苦い苦い「トウヤク」のせんじ薬を、腹痛を演じた偽病も大変な大芝居で有る。
知らぬうちに寝て目が醒めたら朝になって居た。今日はまた和尚様がどんな顔をして怒るのか…心配でならない。
今朝も弟を背負って寺へ行った。和尚様は朝のお勤めが有るので、お供えから掃除など忙しく働いていた。昨日の饅頭はもう無かった。
和尚様のお勤めの準備も終わり、これからお経が始まる時和尚様は「オイよね、ここへ来て私と一緒にお参りをしなさい」と云うので和尚様の後に弟を背負ったままチョコンと正座して小さな手を合わせた。
何時和尚様の神雷様が落ちるのかと心配で心配で朝のお勤めも上の空。
お経も終わり和尚様は静かに話し出した。