
『八百津大橋(やおつおおはし)』は、岐阜県八百津町(やおつちょう)の木曽川(きそがわ)にかかる橋です。 県道358号線(けんどう358ごうせん)の一部になっていて、「錦織(にしこおり)」という地域と「八百津(やおつ)」をつないでいます。 毎年春に行われる「八百津だんじり祭(やおつだんじりまつり)」では、3台のだんじり(お祭り用の山車)が、この橋を通ります。 3台のだんじりがつながると、まるで1そうの船のような形になります。 その姿が八百津大橋の上を進む様子は、迫力がありとても見ごたえがあります。
山奥の町で舟形のだんじり
山の中にある八百津町(やおつちょう)で、船の形をした「だんじり」があるのは、少し不思議に思えるかもしれません。 でも、八百津には昔から川とともに歩んできた歴史があります。 今のように道や車がなかった時代、八百津は木曽川(きそがわ)という大きな川を使った「舟運(しゅううん)」でにぎわっていました。 町には「錦織湊(にしこおりみなと)」や「黒瀬湊(くろせみなと)」といった船着き場があり、ここからたくさんの物が川を通じて運ばれていたのです。
そんな歴史を今に伝えるのが「八百津だんじり祭(やおつだんじりまつり)」です。 このお祭りは、元禄(げんろく)のころ、筏に乗る人たちの安全を祈るために始まったといわれています。 船の形をしただんじりは、木曽川舟運で栄えた八百津の象徴でもあるのです。
林業関係者泣かせ「藤蔓」の活用
八百津(やおつ)には、昔から木曽川(きそがわ)を使って木を運ぶ歴史があります。 川の上流で切られた木は、「藤(ふじ)づる」という植物のつるを使って、筏(いかだ)に組まれ、下流へと運ばれていました。 この昔の知恵を受けついで、今でも「八百津だんじり祭(やおつだんじりまつり)」で使われるだんじりのつなぎ目は、藤づるでしっかりと結ばれています。 毎年、新しい藤づるを使って締めなおす作業は「山絡げ(やまがらげ)」と呼ばれ、祭りの前の大事な準備のひとつです。 でもこの藤づる、実は山では少しやっかいな存在でもあります。 木に巻きついて、木をゆがめたり弱らせたりしてしまうことがあるのです。 さらに、何本もの木にからみつくため、木を切るときに邪魔になり、林業(りんぎょう)の作業中に事故が起きるおそれもあります。 むかしは、藤づるは筏を作るだけでなく、生活の中でも使われていました。 また、村のみんなで山に入って草を刈るときには、見つけた藤づるは必ず切っていたといいます。 けれど最近では、山の手入れがされないまま放置されることも多く、スギ林の中に藤の花が咲く光景も見られるようになりました。 今では「山を荒らす原因」とも言われる藤づるですが、その植物としての性質を知ることで、 昔の人の暮らしに学びながら、藤づると上手に、そして自然にやさしくつきあう方法を考えていきましょう。